トルコリラのリスクプランを考える

日の出

トルコリラ、足元は安定もリスクを内在

トルコリラについては、5年以上ナンピン買いを続けて今に至っており、トータルでの負け(含み損)は100万円を大きく超えています。その詳しい状況については、こちらの記事をご覧ください。

これでも、最悪の時期である昨年(2018年)8月と比べると、含み損は180万円ほど減りました。ここ1年以上トルコリラは比較的平穏に推移しており、セリクラ(セリングクライマックス)も発生していないので、その間に積み上がったスワップポイントが含み損の減少に寄与してくれています。

しかし、トルコリラについてこのような平穏な時期が未来永劫続くとは思えません。一時期より下がったとはいえ、政策金利は16%台と、他の高金利通貨である南アランドやメキシコペソと比べてもはるかに高い水準が続いています。これは、金利の引き下げ余地がそれだけ大きいということを意味します。

金利の引き下げ余地が大きいということは、金利引き下げに伴う通貨価値の下落のポテンシャルもそれだけ大きいということです。海外資本に投資を頼る新興国通貨の場合は、金利引き下げが通貨の下落に直結する場合が多いです。しかも中東の不安定な情勢の中で政治リスクも抱えています。

いつ暴落してもおかしくない通貨、それがトルコリラです。それが高金利の代償です。トルコリラは2017〜18年にかけての暴落があまりに激しく、足元ではさすがに下げ疲れて一服している感はありますが、また、いつ暴れ龍が復活するとも限りません。最悪の事態を想定したプランなしには、とてもお付き合いできません。

最悪の事態を想定する

トルコリラはどこまで下がるのか。それは誰にも分かりません。しかし、2015年〜18年にかけてトルコリラの通貨価値は本当に3分の1になりました。相場には「半値八掛け二割引(はんねはちがけにわりびき)」という格言がありますが、まさにそれを地で行く下落でした。

これからも最大で、それと同程度のドローダウンは想定しておいたほうが良いでしょう。

現在のトルコリラの対円レートは18円〜19円といったところですが、その半値八掛け二割引は、5.7円〜6.1円となります。当面見通せる最悪の事態を5円/リラ程度までの下落とし、そこに至るまでの切りの良い節目として10円/リラ程度への下落の2つの事態を想定し、そのような事態が生じた場合の資金プランを考えてみることにします。

対円レートで10円に下落するケース

まずはトルコリラが対円レートで10円にまで下落する事態を想定してみます。

通貨価値が下落するスピードが実は重要です。下落スピードが早ければ早いほど、その間に貯まるスワップポイントは少なくなりますので、損失は大きくなります。反対に、下落スピードが遅ければ遅いほど、その間に貯まるスワップポイントで損失を穴埋めできるため、トータルでの損失を抑えられます。

さて、ここでは最悪のケースを想定して、どれぐらいの資金があれば耐えられるかを考えてみます。最悪の下落シナリオは、スワップポイントを貯める暇もなく、一気に10円まで通貨価値が下落するケースです。

試算にあたっての前提は次のとおりです。

  • 現在保有している260,000リラはそのまま継続して保有
  • 下落途中、15円/リラまで下落した段階で10,000リラをナンピン買い、以降1.5円下落するごとにさらに10,000リラづつナンピン買い
  • その結果、10円に下落するまでに、40,000リラを平均12.75円/リラで追加購入
  • 一気に価格下落が進むため、その間のスワップポイントによる収益はゼロ

現在のトルコリラの対円レートは18.9円ですから、10円にまで下落するということは、8.9円の下落ということになります。これをもとに計算すると以下とおりです。

(既保有分の損失)
260,000リラ ✕ 8.9円/リラ = 2,314,000円

(追加購入分の損失)
40,000リラ ✕ (12.75 ー 10) = 110,000円

(トータル損失)
2,314,000円 + 110,000円 = 2,424,000円

なかなか厳しい数字が出ました。10円にまでトルコリラが下落すると、最悪のケースで240万円を超える損失です。頓死しないためには、これをカバーできる資金量が必要ということです。

対円レートで5円に下落するケース

次にトルコリラが、対円レートで5円まで下落するケースを考えてみます。

試算の前提は10円に下落するケースと基本的に同じです。

  • 現在保有している260,000リラはそのまま継続して保有
  • 下落途中、15円/リラまで下落した段階で10,000リラをナンピン買い、以降1.5円下落するごとにさらに10,000リラづつナンピン買い
  • その結果、5円に下落するまでに、70,000リラを平均10.5円/リラで追加購入
  • 一気に価格下落が進むため、その間のスワップポイントによる収益はゼロ

トルコリラが対円レートで5円にまで下落するということは、現在の水準(18.9円)から13.9円下落するということです。これをもとに計算すると次のようになります。

(既保有分の損失)
260,000リラ ✕ 13.9円/リラ = 3,614,000円

(追加購入分の損失)
70,000リラ ✕ (10.5 ー 5) = 385,000円

(トータル損失)
3,614,000円 + 385,000円 = 3,999,000円

一気にトルコリラが対円レートで5円にまで下落するという最悪シナリオでの損失(最大損失)は約400万円です。いざというときでも400万円が用意できればドボンは防げそうです。

最大損失をもとに損益分岐点を考察

さて、最悪の事態は想定できました。これをもとに、どれぐらいの期間があれば、スワップポイントで損失を穴埋めできるかを考えてみます。

10円まで下落した損失の穴埋めに必要な期間は?

まずは、トルコリラの対円レートが10円に下落するケースです。このケースの最大損失は先に試算したとおり2,424,000円です。

スワップポイントを計算する上での前提は以下のとおりです。

  • スワップポイントは10,000リラ当たり33,000円/年(くりっく365等を参考に設定)
  • 追加購入分(40,000リラ)のスワップポイント平均積算期間は、既保有分(260,000リラ)の半分の期間と仮定して計算する。

以上の前提で、最大損失2,424,000円をスワップポイントで穴埋めする期間(年数)の計算式は次のとおりです。

26 ✕ 33,000 ✕ (年数) + 4 ✕ 33,000 ✕ (年数)/2 = 2,424,000

これをもとに年数を計算すると、2.62年となります。つまり、トルコリラが10円に下落するまで約2.6年あれば、スワップポイントで損失を穴埋めして収支をトントンに持っていけるということになります。これよりも下落スピードが遅ければ、利益が出ます。

5円まで下落した損失の穴埋めに必要な期間は?

次は、トルコリラの対円レートが5円に下落するケースです。このケースの最大損失は、先の試算によれば3,999,000円となります。

スワップポイントを計算する上での前提は、10円下落ケースと基本的に同じです。

  • スワップポイントは10,000リラ当たり33,000円/年(くりっく365等を参考に設定)
  • 追加購入分(70,000リラ)のスワップポイント平均積算期間は、既保有分(260,000リラ)の半分の期間と仮定して計算する。

以上の前提で、最大損失3,999,000円をスワップポイントで穴埋めする期間(年数)の計算式は次のとおりです。

26 ✕ 33,000 ✕ (年数) + 7 ✕ 33,000 ✕ (年数)/2 = 3,999,000

これをもとに年数を計算すると、4.11年となります。つまり、トルコリラが5円に下落するまで約4.1年あれば、スワップポイントで損失を穴埋めして収支をトントンに持っていけるということです。これよりも下落スピードが遅ければ、やはり利益が出ます。

まとめ(最悪の事態のおける資金量と穴埋め期間)

以上を簡単にまとめると次のようになります。

まず、トルコリラの対円レートが10円にまで下落するケースでは、最悪の事態の備えに約240万円の資金が必要です。下落するまでに2.6年あれば、その間のスワップポイントで損失を穴埋めできます

次に、トルコリラの対円レートが5円にまで下落するケースでは、最悪の事態の備えに約400万円の資金が必要です。下落するまでに4.1年あれば、その間のスワップポイントで損失を穴埋めできます。

メッシュの資金力からいって、なんとかギリギリ資金を用意できそうな水準ではあるものの、やはりリスク量がやや大き過ぎる(too much)印象です。当面、現在のポジションは維持する予定ですが、状況を見つつ、ポジションを少し軽くすることも将来的に検討します。

なお、最悪の事態に備えた資金を常にFX口座に積んでおく必要はありません。メッシュはその資金を優待クロスの資金として普段は有効活用しています。

先憂後楽が大事

ここまで、最悪の想定をした上で、必要な資金量やリカバリーに要する期間をみてきました。

もちろん、最悪の事態にならなければ、こんな良いことはありません。トルコリラの価値が最悪の想定とは真逆にどんどん上がってくれれば、ものすごい利益になるかもしれません。

でも投資にどっぷりつかっている最中に楽観的でバラ色なことばかり考えてもしょうがないです。特にトルコリラでは、過去5年で何度も地獄を見てきたので、なおさらそう思います。楽観的なことを考えるのは後からでも決して遅くないです。先に憂いて後で楽しむ先憂後楽の精神こそ大事でしょう。

こんな投資を参考にする人は少ないかもしれませんし、真似してほしいと思っているわけでもありませんが、本当に高金利通貨に投資しようと思っているのであれば、きちんとリスクを計算しておいた方が良いと思います。

リスクに応じた資金管理が戦略の全てと言っても過言ではありません。本当にリスク対策をしっかりやっていれば、ロスカットは100%防ぐことが可能です。でも巷(ちまた)には、そうでない事例があふれているようです。

皆さんの投資生活の少しでもお役に立てれば幸いです。

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