メキシコペソのナンピン買い始めました
今年(2019年)8月にメキシコペソのナンピン買いを始めました。ロングでのスワップ狙いです。
高金利通貨は不用意に大量のロングをすると非常に危険です。高値掴みを避けつつ、時間をかけて少しづつロングを増やして行く作戦です。
価格の下落を待って少しづつロングを建てる方法がナンピン買いです。ナンピン買いは不用意に高値でロングを建てないためのリスク対策です。
一方で、ナンピン買い自体も大きなリスクを内在しています。価格下落に追随して買い下がって行くことになりますが、それに応じて保有高がどんどん増えるため、価格下落に伴う評価損も加速度的に積み上がっていくことになります。
リスク対応は必須です
リスクが高く危険であるがゆえに、とても無計画では取り組めません。このため、当面の最悪の事態を想定しつつ、不用意に保有高が増えすぎないよう計画を立て、万が一に備えて生き残るだけの資金をしっかり用意しておくことが必要です。
メッシュのナンピン計画とリスクへの備えを完全公開したいと思います。
最悪の事態を想定しよう
メキシコペソは安定通貨ではありません
メキシコペソは南アランドやトルコリラと比べると安定していると言われることがありますが、所詮どんぐりの背比べです。世の動きの影響を受けやすい新興国通貨であることに変わりありません。
メキシコペソの対円レートを見ると、2007年には11円台でした。また、2014年にも8円台をつけていました。現在のレートが5円台ですから、2007年比では約半値、2014年比でも3割以上下落した水準です。
極めて短い時間の間だけを切り取ってみれば安定している時期もあるでしょうが、スワップ狙いでロングするのであれば、相当の長期間の保有を考えていることでしょう。その長期間に半値程度に下落することなど、高金利通貨に関しては決して珍しくはありません。
最大ドローダウンを意識しよう
過去の最安値を想定しておけば十分だと考えるのも全く甘い想定です。過去の最安値など、こと新興国の高金利通貨に関しては何の意味も持ちません。過去の最安値を更新し続けるのが新興国の高金利通貨の宿命です。どこからでも半値程度には下落する可能性があります。最大ドローダウンを常に意識しましょう。
メキシコペソの当面見込まれる下落水準としては、少なくとも半値近い3円程度への下落は想定しておいたほうが良いでしょう。できれば2円程度に下落する事態も想定しておいた方が良いです。
買建てを計画的に行おう
10万通貨づつ区切ってナンピン買い
とりあえず、メキシコペソが対円レートで3円まで下落すると想定して、その間の買建ての計画をざっくりたてましょう。高値でたくさん保有しすぎないようナンピンで買っていきます。10万通貨でスワップポイントが110円から130円といったところですので、この10万通貨を一つの区切りとして買っていくことにします。
ヒロセ通商では1万通貨単位から取引が可能ですし、実際は状況に応じて細かく注文を出していく場合も多いのですが、ここではあまり細かく考えるのはやめましょう。大きな計画のもとにリスクの総量をきちんと把握することが目的なのでざっくり10万通貨単位ぐらいで考えておきましょう。
メキシコペソが3円まで下落する間に80万通貨を保有
メキシコペソが3円にまで下落する過程で、一定間隔でメキシコペソのロングを買建てていくと想定します。メッシュの資力も考慮し、とりあえず0.3円刻みで買建てていくことにしたいと思います。
最初の10万リラは平均取得価格がほぼ5.3円になるように建てました(実際は価格が反転したため9万リラしか約定しませんでした)ので、次の10万リラは平均取得価格が5.0円になるように建てます。その次の10万リラは、平均取得価格が4.7円になるようにします。
メキシコペソの下落に伴ってさらにナンピン買いを繰り返し、最後に平均取得価格3.2円で10万リラを建てるところまで行きます。そこまでで最終的には80万通貨を保有することになります。それらすべての平均取得価格は4.25円となります。
3円までメキシコペソが下落するとどうなるの?
最悪の場合、どれぐらいの損失が出るの?ロスカットは防げるの?
さあ、いよいよメキシコペソが3円にまで下落しました。下落に伴って以上のようにナンピン買いを繰り返しています。損益はどうなったでしょう?
実は損益がどうなるかは、メキシコペソが下落する間にどの程度スワップポイントを稼げるかにかかっています。下落するスピードが早いほど、その間にあまりスワップポイントを稼げないので損失が大きくなります。逆に下落するスピードが遅いほど、その間に稼げるスワップポイントが増えるので、損失は小さく利益が大きくなります。
最悪の想定は、スワップポイントを稼ぐ暇もなく一瞬でメキシコペソが3円まで下落するケースです。この場合の含み損は、以下のようになります。
80万通貨×(4.25円−3円)=100万円
その他にロスカットを避けるためには80万リラ分の証拠金が必要ですが、これが48万円です(10万通貨あたり60000円として計算)。合わせて148万円あれば、メキシコペソが3円に一瞬で下落しても含み損と証拠金をカバーできてギリギリ耐えられます。この場合の損失は含み損の100万円です。
もちろん現実には一瞬で3円になることはなく、下落する間にいくばくかのスワップポイントを稼いでくれているはずです。
スワップポイントで損失の穴埋めはできないの?
では次に、どれぐらいのスピードで下落すればスワップポイントの利益で損失を穴埋できるのかを考えてみましょう。
3円に下落した時点での含み損は100万円ですから、これを1日あたり120円(10万通貨の場合)のスワップポイントで埋め合わせていくこととします。3円に下落するまでの期間の平均保有高を40万リラ(最終的な保有高80万リラの半分)と仮定して計算すると次のとおりです。
1000000円÷(120円/日×4)=2083日
100万円を一日平均480円のスワップポイント(40万リラ分)で稼ごうとすれば2083日、すなわち5.7年必要ということがわかります。
5.7年かけてメキシコペソが3円にまで下落すれば損益はトントンです。これよりも下落が遅ければ利益が出ますし早ければ損失が出ます。
先のことは誰にもわからない
5.7年というのはかなり長い期間です。正直、今から5年以上先のことなど誰にもわかりません。
それだけの期間があれば何が起こってもおかしくありません。3円にメキシコペソが下落しても何の驚きもありませんし、それ以下に下落する可能性だって十分にあり得ます。トルコリラなど直近5年でその価値は3分の1以下に下落しました。本当に予測不能です。用心に越したことはないでしょう。
2円まで下落するケースを考えてみよう
2円に下落した場合の損失は?ロスカットを防ぐには?
さらなるワーストケースとして、メキシコペソが2円にまで下落するケースを考えてみます。下落に伴って、さらにナンピン買いで買い増していきますので、メキシコペソの保有高はさらに膨らみます。その分損失も乗数的に膨らみます。
細かい計算の説明は省きますが、2円に下落するまでにメキシコペソの保有高は120万リラとなっています。それらすべての平均取得価格は3.65円になります。
最悪のケースでの損失は198万円。ロスカットを防ぐには270万円が必要。
スワップポイントを稼ぐ暇もなく一気に2円にまで下落する最悪のケースでは、含み損は198万円、必要証拠金は72万円となるので、270万円保有していればロスカットをギリギリ逃れることが可能です。
(損失の計算)
120万通貨×(3.65円−2円)=198万円
(証拠金の計算)
12×6万円(10万通貨あたりの証拠金)=72万円
スワップポイントでの穴埋めには7年半が必要
この損失(198万円)をスワップポイントで埋め合わせるには、2750日(=7.5年)が必要です。平均保有高60万通貨(最終保有高120万通貨の半分)で計算しています。メキシコペソが2円に下落するまでにこれだけの期間があれば、含み損をスワップポイントで埋め合わせてトントンに持っていくことができるということです。
1980000円÷(120円/日×6)=2750日
メキシコペソ下落の影響(まとめ)
以上をまとめると、次のようになります。
(前提)
・最初に平均取得価格5.3円で10万リラを買建て
・その後、0.3円下がるごとに10万リラづつナンピンで買増し
(メキシコペソが3.0円にまで下落した場合の想定)
・最悪のケースでの損失は100万円
・ロスカットを防ぐためには、証拠金も合わせて148万円が必要
・5.7年あれば、スワップポイントで損失の埋め合わせが可能
(メキシコペソが2.0円にまで下落した場合の想定)
・最悪のケースでの損失は198万円
・ロスカットを防ぐためには、証拠金も合わせて270万円が必要
・7.5年あれば、スワップポイントで損失の埋め合わせが可能
想定通りにいくとは限りません
なお、以上の想定には不確実要素がかなりあります。
実際は、セリクラ(セリングクライマックス)の最中に買う場合もあるので、計画通りきれいに買えるとは限りません。メッシュはメキシコペソでの経験はありませんが、他の通貨で何回か経験があります。
セリクラの間は画面の表示が追いつかないぐらい急速に値が下がるので、常人ではとても注文は間に合いません。スプレッドもびっくりするぐらい広がるので、仮に注文を出せても約定するかどうかは予測不能です。
そもそもセリクラの最中に買い進めるのはすごく勇気が要ります。無一文になってもいいぐらいの覚悟を求められます。武士道といふは死ぬ事と見付けたり。あらかじめ心の備えをして置かなければ、ことに臨んでとても対応できません。すべてを捨てる勇気がない人はこんな投資はやめた方が良いです。
また、現在と同じ水準のスワップポイントがずっと続く保証もありません。高金利通貨は既に高い金利水準にあるわけですから、どちらかといえば金利が下落する確率が高いでしょう。その場合スワップポイントも低下します。できる限り保守的に考えたほうが良いでしょう。
常に大きな危険と隣り合わせ。リスクを意識せよ。
高金利通貨と長く付き合うのであれば、常に危険と隣り合わせです。最悪の事態の想定は欠かせません。
現在、メッシュはメキシコペソのナンピン買いを始めたばかりです。メキシコペソの保有高は9万通貨に過ぎませんし、FX会社に預けている証拠金も10万円ちょっとです。それで日々得られるスワップポイントは約110円程度です。子供の小遣い以下ですね。昼飯にも足りません。
この程度の取引でも、以上のような数百万円単位のリスクを意識せざるを得ないのが高金利通貨のスワップ狙いです。スワップを積み上げるためには長い長い期間が必要です。その間に何が起こってもおかしくないです。これぐらいの覚悟がないと、とても高金利通貨とのお付き合いはできません。
良いときもあるよ。投資を楽しもう。
正直、あまり人におすすめできる投資法ではないような気もします。でも、最悪の事態を想定していれば、まさかの事態も乗り切れるでしょう。
投資には追い風もあれば向かい風もあります。高金利通貨と付き合うには最悪を想定した覚悟は必要ですが、実際やってみると悪いことばかりではないです。良いときもたくさんあります。死にそうな目に会うこともありますが、けっこう楽しいですよ。
メッシュの運用状況は引き続き定期的にお伝えしていく予定です。皆さんも楽しい投資生活をお過ごしください。
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