優待クロスのコストと節約方法(その3) 売りに要する経費②(事務管理費及び逆日歩(品貸料))

アヒル

優待クロスのコストは、大きく以下の経費から成り立っています。1〜4は売りに関する経費です。5は買いに関する経費です。

  1. 売建手数料
  2. 貸株料
  3. 事務管理費(売建て期間が1月を超える場合のみ)
  4. 逆日歩(品貸料ともいいます。制度信用売りの場合のみ)
  5. 現物買手数料(または買建手数料+買方金利)

前回は、上記のうち、1.売建手数料と、2.貸株料について説明しました。

今回は、3.事務管理費と、4.逆日歩(品貸料)について説明します。

事務管理費

事務管理費は、信用取引の建玉を管理するために証券会社に支払う事務経費です。新規に建玉を建ててから、1ヶ月を経過するごとに課金されます。証券会社によって「管理費」や「信用管理費」、「信用事務管理費」など様々な名称がついています。

買玉でも売玉でも等しくとられます。

新規建てから1ヶ月経過しないと課金されないので、この経費を考慮しなければならないのは1ヶ月以上にわたり長期にクロスする場合だけです。それより短い期間のクロスでは考慮する必要はありません。

1ヶ月以上経過したかどうかは、取引日ベースで判定されます。受渡日ベースではありません。例えば、ある月の15日に売り建てたとして、1ヶ月後の応答日(翌月の15日)までに決済すると(取引日ベース)、事務管理費は徴収されません。応答日を過ぎて16日以降に決済すると、事務管理費を1ヶ月分徴収されます。

以降、次の月の応答日を過ぎるごとにさらに課金されていきます。

事務管理費は各社横並び(SMBC日興証券を除く)

事務管理費は楽天証券、GMOクリック証券、マネックス証券、カブドットコム証券、SBI証券で有料です。金額は各証券会社横並びです。1ヶ月分の事務管理費が、建玉1株あたり11銭(税込)、1銘柄あたりの最低金額は110円(税込)、最高金額は1,100円(税込)となっています。

分割発注して売り建てたとしても、同一日に売り建てた同一銘柄であれば、まとめて課金されます。それぞれの注文分ごとに課金されて二重三重に徴収されることはありません。

SMBC日興証券は事務管理費が無料

SMBC日興証券は事務管理費が無料です(日興イージートレードの場合)。この点でSMBC日興証券は他証券と比べて大いなるアドバンテージがあります。長期間のクロスを行う際、とても重宝します。

実際SMBC日興証券では、やたらめったら早くクロスする人がいるのか、権利日の2、3ヶ月前から在庫が空っぽの銘柄も珍しくありません。ただ、あまり早くクロスすると貸株料は嵩みます。

事務管理費の計算は?

事務管理費の計算は簡単です。

100〜1,000株のクロスであれば、1ヶ月あたり110円(税込)と覚えておけばよいです。ほとんどの場合これで事足ります。1,500株のクロスでは、1ヶ月あたり165円(税込)、2,000株のクロスでは1ヶ月あたり220円(税込)です。

あとはクロスする月数を乗じるだけです。100株を2ヶ月超クロスするのなら220円(税込)です。

逆日歩(品貸料)

逆日歩は、日証金(日本証券金融株式会社)の公式ウェッブサイトでは品貸料と記載されています。前回の記事で説明した貸株料と紛らわしいですが別物です。

制度信用売りを行う場合に日証金から株を借りますが、そのための貸株が不足した場合、日証金は一定範囲のプレミアムを払って入札により貸株を集めてきます。そのプレミアムは株を借りて制度信用売りを行なっている人が負担します。これが逆日歩(品貸料)です。

消費税は非課税です。(参考:国税庁質疑応答事例

逆日歩を負担する可能性があるのは、制度信用売りの場合だけです。一般信用売りでクロスする場合は、逆日歩を考慮する必要はありません。

逆日歩がいくらになるかは前もってわからない

どうしてもクロスしたい銘柄について在庫不足等により一般信用売りできなかった場合、制度信用売りの利用が頭をよぎります。しかし逆日歩が怖いです。逆日歩がいくらになるのかを前もって正確に予測することはできないからです。

予測を試みる人もいるようです。制度信用売りを使った優待クロスでは、権利付き最終日の前場寄付でクロスされるケースが多いので、そこでの出来高をもとに株不足の進み具合を判断して逆日歩の水準を予測するのです。

が、対象銘柄の過去の株不足と逆日歩に関する実績データが無いと予測できませんし、予測したとしても、逆日歩の水準は結局日証金の入札結果次第なので、その精度は必ずしも高くないようです。

逆日歩には上限がある

逆日歩の事前の予測はできませんが、だからといって逆日歩が青天井で高額になることはありません。これは、日証金の入札が一定の上限を設けて行われるためです。逆日歩の最高限度を俗に最高逆日歩といったり、MAX逆日歩といったりします。

一部の限られた銘柄では、最高逆日歩が優待価値に比較して安価であるため、逆日歩リスク承知で制度信用売りによるクロスが行われるケースもあるようです。まんだらけ(2652)などが有名です。

まんだらけ(2652)は100株保有で5,000円の優待券がもらえますが(長期保有の場合)、注意喚起が出されていても最高逆日歩は1,100円前後にとどまります(逆日歩日数1日の場合)。これならどんな逆日歩がついても、確実にお釣りが来ますね。

なお、最高逆日歩の計算の仕方については別の記事で詳しくまとめてありますので興味があれば是非ご覧ください。

一般信用売りでクロスすれば、逆日歩は無視できる。でも・・・

逆日歩は、一般信用売りでクロスを行なっている限り、完全に無視できるコストです。一部のチャレンジ精神あふれた人や博打好きな人以外は、あまり気にする必要はないでしょう。

一方で、限られた一部の銘柄では、逆日歩がいくら高額になってもほぼ許容範囲というケースもあるでしょう。逆日歩を甘く見ると命取りになりますが、どこまで怖れるかはその人次第です。逆日歩の怖さと限界をよく理解して、制度信用をうまく使いこなせるようになれば、優待取得の幅が広がり、より一層豊かな優待生活が送れることでしょう。

ただし、制度信用売りの判断はくれぐれも自己責任でお願いします。

最後に

今回は、売りに関する経費のうち事務管理費と逆日歩(品貸料)について説明しました。これらの経費は、長期にクロスする場合や制度信用売りを使ってクロスする場合以外は、気にする必要はありません。

ただ優待クロスをやっていると、どうしても制度信用売りを使いたいという誘惑が生じたりします。このときにどう判断するかは人それぞれですね。

事務管理費は完全に予測可能でその額もたかだか知れていますが、逆日歩は、見くびると痛い目にあいます。多分大丈夫だろうという根拠のない当て推量が、往々にして死を招きます。

メッシュも2,000円のクオカードを取得するのに10,000円以上の逆日歩を払ったことがあります。前日までの貸借倍率が1を超えていたので安易に突っ込んだらそうなりました。

本当に制度信用売りを使いたいのであれば、根拠のない蛮勇は必要ではありません。必要なのは石橋を叩いて渡る慎重さです。皆さんがメッシュの失敗の二の舞を演じないよう祈ります。

次回は、買いに関する経費の説明です

今回で売りに関する経費の説明は終了です。次回は、買いに関する経費を説明します。

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