
2021年2月に静かに産声を上げた松井証券の「優待クロス」取引。
使い慣れれば清算注文まで一発で完了するので手間いらず。その上、貸し株金利が2.0%の銘柄も多いので、優待クロスのコストも比較的安いです。
さて、松井証券のこの「優待クロス」取引ですが、初めて使う方は、よい意味でその内容に面食らうことでしょう。市場外取引の一種なのですが、投資家が自分の好きな価格で約定させることのできる、これまでにない趣(おもむき)の取引です。
ある意味、前代未聞と言ってよいでしょう。約定価格を選べるので、必要資金を極力抑えられますし、手数料の予見可能性が高く、リスクを最小限に抑えられます。
これを使わない手はありませんね。
それでは、どうぞご覧ください。
取引の手順
まずは、約定に至るまでの取引の流れをご覧ください。
「株式取引」から「優待クロス」を選択
まずは、画面上方取引メニューの「株式取引」を選び、その後の画面で「優待クロス」を選択してください。(手順①、②)

対象銘柄を検索
「優待クロス」取引が可能な銘柄を検索する画面になりますので、画面の指示に従い検索します。
ここでは、「2月優待」、「短期または無期」を選んで、「検索」ボタンを押します。(手順③〜⑤)

取引銘柄を選定
条件に合う銘柄が出力されますので、その中から取引を行う銘柄を選びます(手順⑥)。
ここでは、「平和堂(8276)」を選びます。1日あたりの貸株料が右端の欄に表示されています。親切ですね。

取引株数と指値を入力、そして発注
「買い(現物買)」と「売り(信用売)」は、セットで発注されます。片方だけ発注してしまう心配はありません。
まず、取引数量と指値を入れます。
取引数量は、株主優待の取得に必要な株数を入力してください。(手順⑦)
指値は、決められた範囲内であれば、自由な額を入力して構いませんが、低い額を入れた方が投資家に有利です。理由は後述します。(手順⑧)
この後、指値入力した金額で約定します。「買い」と「売り」は必ず、当該金額で同値で約定します。
市場価格で約定するわけではありませんので、ご注意願います。市場外取引なので、市場での価格変動の影響を直接受けることはありません。(ただし、市場価格は指値できる範囲に影響するため、間接的には約定価格に影響があります)

精算注文は、デフォルトで「あり」、「次回優待権利落ち日に精算する」になっていると思いますので、通常はそのままで大丈夫です。
一通り確認が終わったら、「注文確認」から「注文」します。(手順⑨)
発注すると、場中であれば、即約定します。(正確には、午前8時20分以降の注文であれば、即約定します)
約定結果
発注すると即約定しますので(場中の場合)、さっそく約定結果を確認しましょう。
自分が入力した指値で約定しているのが確認できるはずです。加えて精算注文が、すでに注文待になっているのも確認できます。この注文は、権利落ち日に自動発注され約定します。
なお、場が開く前に発注することももちろん可能で、この場合は、前場が開く前の8時台には約定します。

精算結果
さて、権利落ち日を迎えました。ちゃんとやってるかな?
権利落ち日(このケースでは2/18)の午前3時に決済注文が勝手に発注されて、無事約定しています。何もしなくても手仕舞い終了!
これで、もう現引きを忘れることはありませんね。お疲れさまでした。

以上が、「優待クロス」取引の銘柄選定から約定、そして精算に至るまでの流れです。
「優待クロス」取引の特徴と使い方
さて、ここからは、「優待クロス」取引の特徴と使い方を考察していきます。
市場外取引である
まずは、押さえるべき基本中の基本として、「優待クロス」取引は、あくまでも松井証券の裁量で行われる市場外取引であるということを認識しておきましょう。
このため、東証など市場の影響を直接受けずに取引できます。市場での取引だと、寄付で約定させても売り買い双方の玉が揃わなければ「買い」と「売り」が同値で約定しない事態もありえますが、「優待クロス」取引ではこの様な事態は起こりません。
松井証券さんの説明によると、「優待クロス」取引では、「買い」と「売り」は必ず同値で約定します。その分、リスクが低いと言えそうです。
約定価格を指定できる
松井証券の裁量取引なので、かなり自由度が高い取引が可能となりますが、その最たるものがコレ。なんと、約定価格を投資家が決められます。
ただし、決められる範囲(指値範囲)は市場価格の上下7%の範囲です。市場価格の変動に従って、指値範囲も場中はリアルタイムで変動します。
指値範囲内であれば、自由に指値を入れることができ、実際にその指値で約定します。
なお、約定価格は低いほど、一般的に投資家にとって有利です。
理由の一つ目は、約定価格が低ければ、手数料も安くなるからです。松井証券の場合、1日の約定代金50万円までは手数料無料です。50万円を超えると、1,100円(税込)の手数料を取られます。約定金額が増えると、さらに手数料も高額になっていきます。
理由の二つ目は、低い価格で約定したほうが、必要資金が少なくて済むからです。現物取得に必要な資金が少額で済みますし、売り玉の方は評価損が嵩むものの、現物による信用代用で十分カバーできますので、トータルとしては必要資金を節約できます。
これらの理由から、できる限り、低い金額で約定させたほうがよいでしょう。
精算注文が自動発注
松井証券の「優待クロス」取引は、精算注文が自動発注されます。
松井証券の説明によると、精算は、原則現渡しで行われますので、手数料を取られることもないと言うことでした。なお、自動発注を利用しないことも可能です。
自動発注のおかげで、権利落ち日の作業負担が大幅に緩和されますね。もちろん発注の失念もなくなります。
これは大助かりです。
まとめ
以上、いかがだったでしょうか。
松井証券の「優待クロス」取引。ワタシ的には、久々の超便利発注ツールの登場に大興奮です。特に約定価格を自由に決められるところなぞ、文字どおり空前絶後です。
今回、実際に取引を行ったのはワタシの家内です。2月20日権利日の平和堂(8276)を100株、「優待クロス」で取引してみました。
その日の株価は、2,220円前後でしたが、実際の約定価格は2,071円。資金をだいぶ節約できました。しかも、この約定価格であれば、買いと売りをあわせても、約定金額は50万円以下ですので、松井証券での取引手数料は無料です。
さらに、松井証券さん、一般信用売り(無期)だと、貸株料も2.0%とリーズナブル。auカブコム証券の2.25%より安いです。今回の平和堂のクロス取引も、2.0%の貸株料なので、コストは73円程度(6日分)。
優待クロス界に、きらめく新生スターが降臨したかのような印象です。ぜひ、対象銘柄も充実させて、SMBC日興証券やauカブコム証券とサービスを競ってもらいたいです。
こんな競争なら、投資家的には大歓迎ですね。
最後に、注意点を1点だけ。松井証券は、1日の約定代金が50万円を超えるととたんに手数料が高くなりますので、値がさ株だと使いづらいです。一方で、約定代金が50万円を超えない限り手数料はタダですので、低位株だと無双の力を発揮します。銘柄選びを間違えないようにしましょう。
1日の約定代金は、現物取引と信用取引の合計額で判定されますので、優待クロス取引(現物買いと信用売りのセット)の場合は、25万円までの銘柄しか手数料無料で取引できませんが、取引できる銘柄の幅を広げる裏ワザも存在します。
詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
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