最高逆日歩の求め方。これを知れば制度信用も怖くない!?(初心者向け)

虎

優待クロスの最大の鬼門は逆日歩です。

これを避けるために一般信用売りを利用される方が多いと思いますが、どうしても欲しい銘柄について一般信用売りの在庫がない場合、制度信用売りの利用が頭をよぎります。

逆日歩リスクがあり危険ではあるものの、蓋を開けてみるとわりと許容範囲の逆日歩で終わることも多く、突撃すればよかったと悔やむこともあります。

制度信用で突撃するかどうかを判断する上で重要なものの一つが最高逆日歩がいくらになるのかですね。最悪のケースを想定しておけば、「こんなはずじゃなかった」という後悔も防げるでしょう。

本日は、最高逆日歩のルールと求め方についてお伝えします。

そもそも最高逆日歩ってなに?

こんな見出しをつけておいてなんですが、最高逆日歩は逆日歩の上限とだけ覚えておけば良いです。これを超える逆日歩には絶対になりません。重要な点はそれだけです。

それ以上の知識は優待クロスをする上で必ずしも必要ではありませんが、一応説明すると、以下のようになります。

制度信用売りの場合は売りに必要な株式を日証金(日本証券金融株式会社)から借りることになるのですが、日証金は貸し出す株式の在庫が手元にない場合、これを入札で集めます。この入札における応札価格の範囲が日証金によってあらかじめ決められており、その上限が最高逆日歩となるわけです。

最高逆日歩のルール

さあ、それでは本題に入りましょう。最高逆日歩はどのように決まるのでしょうか。

最高逆日歩を決める要素は3つしかありません。株価と売買単位と倍率適用に応じた倍率です。

もう少し噛み砕いて言うと、株価と売買単位に応じて銘柄ごとの逆日歩の最高料率が決まり、その最高料率に倍率(倍率適用が実施された場合)を乗じると、実際に適用される最高料率(=最高逆日歩)となります。

計算式で表すとこんな感じです。

 逆日歩の最高料率(株価と売買単位で決まる) ✕ 倍率(倍率適用の場合) = 最高逆日歩

それでは、一つ一つ説明します。

逆日歩の最高料率はどうやって決まるの

まずは逆日歩の最高料率についてです。

先に述べたとおり、逆日歩の最高料率は株価と売買単位で決まります。株価とは当該銘柄の株価そのものです。売買単位とは100株単位で売買するのか、1000株単位で売買するのか、REITのように1株単位で売買するのかということです。

それでは、実際に日証金(日本証券金融株式会社)が公表している最高料率の早見表を見てみましょう。下の表がその早見表(1日・1株あたり)の抜粋です。

逆日歩最高料率抜粋
(日証金ウェッブサイトから引用)

この表は、売買単位が100株の部分を抜粋したものです。表頭の100株というのが売買単位に当たります。株式の場合は、大部分の銘柄がこの区分に入りますね。

その下の左列にある貸借値段というのが1株を借りるのに必要となる金額です。1000円の株価の銘柄であれば、1株借りるのに1000円必要です。1500円の株価の銘柄であれば、1株借りるのに1500円必要です。すなわち、貸借値段=株価です。

なお貸借値段は、その日の最終の株価(通常は終値)によって決定されます。したがって、その日の終値が決まるまでは、厳密には最高料率は未定です。ただし、大体の推察はできるでしょう。

最高料率は早見表を見るだけ

貸借値段(=株価の終値)がわかれば、あとは早見表を見るだけです。最高料率がすぐにわかります。

なお、この早見表はすべて1株、1日あたりで記載されています。すなわち、ここに記載されている最高料率は、1株の1日あたりの最高料率です。

実際の取引は、100株単位で行われることが多いですし、建玉も複数日にまたがることがあるので、取引の株数と日数を乗じると、当該取引に応じた最高料率が計算できます。

例えば株価1000円の銘柄の最高料率は2.0円(1株・1日あたり)ですが、100株クロスした場合は、実際の最高料率は、2.0円 ✕ 100株 = 200円となります。さらに土日を挟んで3日借りた場合は、200円 ✕ 3日 = 600円となります。

日をまたぐ数だけ、逆日歩をとられます

日数の計算についても補足しておきます。逆日歩は制度信用売りを売り建てたまま日をまたぐと1日分徴収されます。日をまたがず、その日のうちに決済すれば(日計り取引)、逆日歩は徴収されません。また、日をまたぐかどうかはすべて受渡日ベースで判定されます。

したがって、金曜日(受渡日)に売り建てて、翌週の月曜日(受渡日)に手仕舞うと、日を3回またぎますので、3日分の逆日歩が徴収されます。これを取引日ベースに直すと、水曜日(取引日)に売り建てて、翌日木曜日(取引日)に手仕舞うと3日分の逆日歩が徴収されるというわけです。

逆日歩の最高料率のまとめ

それでは、ここまでをまとめます。

株価(終値)と売買単位がわかれば、日証金の早見表で最高料率(1日・1株あたり)がわかります。

これにクロスする株数を乗じて、さらに土日を挟むのなら(受渡日ベース)3日分を乗じることにより、逆日歩の最高料率がわかります。12月優待の銘柄は年末・年始を挟むので、6日分や7日分あるいはそれ以上の逆日歩となることもあります。

以外と単純ですね。

倍率適用はどうやって決まるの?

次に倍率適用について見ていきましょう。

日証金では、注意喚起銘柄や権利日間近の銘柄など特定の銘柄について、最高料率を引き上げる倍率適用を実施します。注意喚起銘柄とは、株不足の懸念等から日証金により注意喚起が行われている銘柄のことです。

この倍率適用が実施されると、実際に適用される最高料率(=最高逆日歩)がその倍率の分だけ引き上げられます。

適用される倍率は日証金がウェッブサイトで公表しています。下の表がそれです。

倍率適用
(日証金ウェッブサイトから引用)

理解しておくべき重要なポイントは3つです。

1つ目は、権利付き最終日間近だと、必ず倍率適用(2〜4倍)となります。
2つ目は、注意喚起が行われた銘柄は倍率適用(2倍)となります。
3つ目は、条件が重なると、倍率も重ねがけで跳ね上がります。

細かく見ていきます。

権利日間近だと倍率適用

権利付き最終日が間近だと必ず倍率適用です。実際に制度信用で突撃する場合は権利付き最終日に突撃する場合が多いと思われますが、この場合は4倍の倍率適用です。

中には、売り禁(株不足で日証金が制度信用売りの新規受付を停止すること)になるのを見越して、何日か前から制度信用で売り建てる方もいらっしゃるかもしれませんが、その場合は2倍の倍率適用が適用されることもあるでしょう。

注意喚起銘柄は倍率適用

注意喚起銘柄に指定されると、倍率適用(2倍)です。

なお、注意喚起銘柄の指定は、当日の昼頃(前場と後場の合間)に行われることもあります。後出しジャンケンのようですが、仕方ありません。その場合でも、当該倍率適用のもとにその日の最高逆日歩が決められます。

(注)あくまでも最高逆日歩の決め方であって、実際に適用される逆日歩が最高逆日歩になるとは限りません。

条件が重なると倍率は重ねがけ

倍率適用の条件が重なると倍率は重ねがけです。これも極めて重要なポイントです。

権利付き最終日(4倍)に注意喚起銘柄(2倍)の制度信用売りを行うと、4 ✕ 2 = 8倍の倍率適用です。先の表にもその旨記載されていますね。

極めて異常な貸株超過(株不足)

最後に大事な点をもう一つ。先の表の一番下の欄に、極めて異常な貸株超過(株不足)等の銘柄に指定された場合に10倍の倍率適用になるとあります。人気優待銘柄の場合は、この指定が行われることは決して珍しいことではありません。

君子危うきに近寄らず。これが出された場合には、素直に突撃を諦めたほうが身のためかもしれません。

なお、この銘柄指定も、当日の昼頃(前場と後場の合間)に突然行われることがあります。制度信用で突撃する人は権利付き最終日の前場の寄付でクロスを入れることが多いので、そこで出来高が跳ね上がって一気に株不足が進むケースがあるようです。

石橋を叩いて渡るのなら、銘柄指定が行われないことを確認して後場で突撃したほうが良いかもしれません。ただし普通の勤め人だと、そんなことをやっている暇はないですね。。。

倍率適用のまとめ

倍率適用についての説明は以上です。

注意喚起などの銘柄指定状況については、日証金のウェッブサイトで確認できますが、取引を行う証券会社の銘柄情報でも容易に確認できるはずです。

権利付き最終日に売り建てるのであれば、通常でも4倍の倍率適用、さらに注意喚起銘柄なら8倍の倍率適用、異常な株不足の銘柄については10倍の倍率適用と覚えておきましょう。

最高逆日歩を実際に計算してみよう

逆日歩の最高料率と倍率適用が理解できれば、最高逆日歩の計算は簡単です。次の算式に当てはめるだけです。

  逆日歩の最高料率(取引株数・日数あたり) ✕ 倍率(倍率適用の倍率) = 最高逆日歩

それでは実例を使って実際に最高逆日歩を計算してみましょう。

千趣会(8165)の株価は350円です。12月の権利付き最終日に500株を制度信用でクロスするとして最高逆日歩はいくらでしょうか。人気銘柄なので注意喚起が出ています。12月末に売り建てると年末・年始を挟むので7日分の逆日歩を徴収されるものとします。

日証金の早見表をみながら考えます。

  • 千趣会(8165)の売買単位は100株ですから、最高料率(1日・1株あたり)は1.0円です。
  • 500株を7日分売り建てますので、最高料率は1.0 ✕ 500 ✕ 7 = 3500円となります。
  • 権利付き最終日に注意喚起が出ていますので4 ✕ 2 = 8倍の倍率適用です。
  • したがって、最高逆日歩は、3500円 ✕ 8倍 = 28,000円です。

ちなみに、千趣会を500株クロスしてもらえる買物券は4000円分です。突撃して28,000円の逆日歩を喰らったら、きっと激しく後悔するでしょう。状況にもよりますが、メッシュは注意喚起が出ていたら、千趣会は多分突撃しないと思います。

12月末が権利日の銘柄は、最高逆日歩が特に大きくなりがちです。みなさんも気をつけましょう。

(まとめ)これで逆日歩も怖くない!?

最高逆日歩がわかれば、最悪の事態を想定したリスクコントロールが可能となります。また、在庫切れの人気銘柄でも意外と最高逆日歩が低い銘柄もありますので、突っ込む覚悟を決めやすくなることもあるでしょう。

仕組みさえ理解できれば計算は簡単ですので、制度信用の突撃判断にぜひお役立てください。

なお、決して制度信用の利用を勧めている訳ではありませんので誤解なきようお願いします。制度信用の利用はあくまで最後の手段でしょう。一般信用で売り玉を確保できれば、逆日歩に悩むことなくノーリスクで優待を取得できます。このほうが、精神的にもはるかに楽でしょう。

皆様の素晴らしい投資生活のお役に立てれば幸いです。

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