
優待クロスを行っている場合のお得な確定申告について考える連載の第3回です。
前回までに、税金には国税と地方税があること、税金は所得に対して課税されること、所得がある場合には国税と地方税の両方が課税されることを見てきました。まだご覧になっていない方は、こちら(第2回)をご覧ください。
さて、所得に対して税金が課税されるわけですが、税金の額の計算方法は決まっています。これを理解しないことには、お得な納税を考えることはできません。
今回は、税金の計算方法の基本について見ていきます。
税金の計算の基本中の基本
税金の計算は、突き詰めていくと、非常に単純明快です。基本は、これだけです。
「所得」✕「税率」=「税額」
税率はあらかじめ決まっていますので、「所得」が多ければ多いほど、「税額」は大きくなります。逆に「所得」が少なければ少ないほど、「税額」は小さくなります。
簡単ですね。でも、実際は、「所得控除」やら「税額控除」やらいろんなものがさらに絡んできますので、現実の計算は、だんだん複雑怪奇になっていきます。
所得控除と税額控除
ここで「所得控除」と「税額控除」について押さえておきましょう。賢い納税を考える上で、最重要項目と言って良いです。
所得控除
「所得控除」とは、所得から差し引くことができる金額のことです。「所得」が少なければ「税額」が小さくなりますので、所得から差し引くことのできる所得控除によって、税金を少なくすることができます。
「所得」ー「所得控除」=「課税所得」
実際に納税額を計算するときは、この「課税所得」に「税率」をかけて、「税額」を計算します。
「課税所得」✕「税率」=「税額」
所得控除には、扶養親族がいる場合の扶養控除、一定の要件を満たす配偶者がいる場合の配偶者控除、すべての者に一律に適用される基礎控除などがあります。
基礎控除は所得税で38万円、住民税で33万円です。
主婦のAさんも、最低限、基礎控除だけは受けられますし、事情によっては、ほかの所得控除を受けられる場合もあります。仮に基礎控除しか受けられないとしても、所得が38万円以下(住民税の場合は33万円以下)であれば、基礎控除を差し引いて、課税所得は0円となります。課税所得が0円だと、当然、税額も0円になりますね。
ただし、確定申告をしないで、証券会社の特定口座(源泉徴収あり)で証券会社が天引きするのに任せておいた場合は、この基礎控除の恩恵を実質受けられません。
証券会社は、税金の天引きに当たって、いちいち顧客の事情を考慮することはありません。それぞれの顧客が、まだ所得控除を差し引けるのかどうかなんて関係なしに、配当所得がある場合は、一律に、その配当所得に税率をかけて税額を算出し、その税額を天引きします。
その結果、顧客が実は所得控除で課税所得を減らせる可能性があっても、証券会社は、そんな事情は考慮せずに、満額の税金を天引きします。
結局、自分の身は自分で守るしかありません。証券会社が、あなたにだけ優しく気を使ってくれることはないのです。
そして、自分の身を守る方法の一つが、ちゃんと自分で考えて確定申告を行うことなのです。
あなたの税金が戻ってくるのも来ないのも、あなたの判断にかかっているのです。
(注)上記の記載は、全て令和元年度分までの申告について説明したものです。令和2年度分からは、基礎控除などの制度が変わります。
税額控除
次に「税額控除」です。「税額控除」とは、税額から差し引くことができる金額のことです。「税額」から「税額控除」を差し引いた残りが、「納税すべき額」となります。
「税額」ー「税額控除」=「納税すべき税額」
税金の額を引いてもらえるなんて、うれしいですね。こんな良いものがあるのなら、いくらでも使いたいです。
実は、配当所得に関しても「配当控除」という税額控除があります。
しかし、この「配当控除」は無条件に受けられるわけではありません。確定申告をして、配当所得について総合課税を選択した場合だけ、この「配当控除」が受けられます。
具体的に何を言っているのか、ピンとこないと思いますが、そのうち詳しく説明します。
ここでは、税額から直接差し引ける「税額控除」というお得な仕組みがあること、確定申告のやり方次第で、「配当控除」などの税額控除が受けられるかどうかが変わってくるということだけ、まずは認識しておけば良いと思います。
税金の計算のまとめ
ここまでに説明した税金の計算方法をまとめると次のとおりです。
「所得」ー「所得控除」=「課税所得」
「課税所得」✕「税率」=「税額」
「税額」ー「税額控除」=「納付すべき税額」
賢い節税を行ってお得な納税を行う最も重要なポイントは、「所得控除」と「税額控除」を上手に活用することです。そして、上手に活用できるかどうかは、確定申告のやり方にかかっています。
あなたが、自分の置かれた状況に最も適した納税方法を選択すれば、支払う税金を最小限に抑えらられるのです。
さあ、説明はまだまだ続きます。いよいよ本題に入っていきますよ〜
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