(2023/3/6 再アップ)
以前の記事ですが、再アップします。今年(R5)の確定申告も、ほぼこの記事の通りで大丈夫です。
今見ても、なかなか良くできた記事で、ワタシが一番助かっています。
昨年の苦労をこの記事に残しておいて、本当に良かったです^^
(以下、元文)
確定申告の季節がやってまいりました。今年(R3)も昨年(R2)に引き続き、新型コロナの影響で申告期限が4月15日までと、1ヶ月延長されています。でも、もうだいぶ期限が迫ってますね。
税金を納めなければならない場合は、申告期限までに申告しないと延滞税などのペナルティの可能性がありますが、還付申告(税金が戻ってくる申告のこと)の場合は、期限を過ぎても基本的に問題ありません。けっこう過ぎても大丈夫で、なんなら5年分ぐらいさかのぼって申告することも可能です。
ウチの奥様は専業主婦なんですが、優待投資家の端くれでもあります。
証券会社の特定口座(源泉徴収あり)を使ってますので、税金を天引きされますが、そもそも所得が少ないので、ちゃんと確定申告すれば、源泉徴収された税金は返ってきます。
でも、奥様が自分で確定申告することはありません。確定申告は、なぜか毎年、ワタシの仕事です。
先日ようやく、今年の確定申告を終えることができました。毎年毎年、「どうやって申告すれば一番オトクだっけ?」と同じことを悩みます。もちろん本人の奥様に相談するわけにもいきません。相談しても「ワタシわかんないから、アンタ考えて!」と言われるだけです。
そんな悩みを毎年繰り返すことがないよう、備忘用として、この記事をまとめています。
要するに、どのように比較検討して、最もオトクな申告に至ったのか、その考え方を整理しておこうという趣旨です。
中身は、まさにウチの奥様の確定申告実録シリーズといって過言ではありません。ただ実際の数字を使うと生々しすぎるので、少し丸めています。が、内容は、ほぼ実際の申告に近いものです。
所得の実態
大前提として、うちの奥様の所得実態(令和2年分)はこんな感じです。
- 配当所得 840,000円
- 株式等譲渡損失 560,000円(←損失です!)
- 源泉徴収税額(所得税) 100,000円
- 源泉徴収税額(住民税) 30,000円
- 以上のほか、雑所得 180,000円
奥様が使っている証券会社は8社。上の数字は8社の数字を合計したものです。源泉徴収税額は、各証券会社の特定口座で天引きされた税金の合計額です。
優待クロスだけであれば、配当所得と株式等譲渡損失(大部分は配当落調整金の支払いです)の額はほぼ同じ額になるはずですが、実際は別途、IPOやPO、立会外分売での利益がありますので、その分、株式等譲渡損失の額が圧縮されています。
また、もろもろの雑所得が18万円ほどあります。これは、給与収入がある方の場合だと、73万円の給与(支給額)がある方に匹敵します。
73万円(給与収入) ー 55万円(給与所得控除) = 18万円(給与所得) ← 奥様の雑所得と同額
仮にパートで働いている方で73万円の支給額の方がいれば、ウチの奥様と全く同じ税金の計算になります。
税務署への申告(所得税)
税金の申告には、税務署への申告(所得税の申告)と、市区町村への申告(住民税の申告)の2種類がありますが、まずは、税務署への申告(所得税の分)を見ていきます。
なお、「確定申告」といわれるのものは、厳密には、これから説明する税務署への申告のことです。
検討すべき点は、配当所得について、申告するかどうかも含めて、どのような方法を選択すれば最もオトクか、ということです。
ちなみに配当所得について選択できる方法は、以下の3つです。
- 総合課税
- 申告分離課税
- 申告不要(←確定申告しないことです)
国税庁ウェッブサイトの「確定申告特集」から確定申告書を作成する場合、特定口座年間取引報告書の内容を打ち込む際に、まず最初に、配当所得について「総合課税」と「申告分離課税」のどちらを選択するかを必ず聞かれます。
あそこの選択が、運命の分かれ道ですよ〜
選択によって、税額はどう変わるの?
ここからいよいよ本題です。
配当所得について、総合課税、申告分離課税、申告不要のそれぞれを選択した場合に、納めるべき税金がどうなるのかを、一つ一つ詳しく見ていきましょう。
総合課税を選択
まずは、配当所得について総合課税を選択する場合。
総合課税を選択する場合、所得税の計算は次のようになります。
840,000円(配当所得) + 180,000円(雑所得) ー 480,000円(基礎控除)= 540,000円(課税標準)
540,000円(課税標準) ✕ 5.105%(税率) = 27,567円(税額(控除前))
27,567円(税額(控除前)) ー 84,000円(配当控除) = 0円(税額)
(注)840,000円(配当所得) ✕ 10% = 84,000円(配当控除)
配当控除の金額は算出税額を限度とすることとなっています(この場合、27,567円)
以上が、配当所得について総合課税を選択した場合の所得税の計算です。
納めるべき所得税の税額が0円なので、源泉徴収で天引きされた税金(所得税)は本来の税額(0円)に比べて払い過ぎということになります。したがって、すでに納めた100,000円(所得税の分)は還付されます。
以上のほか、確定申告により、560,000円の株式等譲渡損失を翌年以降に繰り越すことが可能です。繰越できる期間は、最長3年です。
翌年以降に株式等の取引で利益が出た場合、その利益と繰り越した損失を相殺できますので、その分翌年以降に納める税金を減らせます。
申告分離課税を選択
次は、配当所得について申告分離課税を選択する場合。
申告分離課税を選択する場合、税金の計算は次のようになります。ポイントは、損益通算ができることと、配当控除ができないことです。あと分離課税の分は、税率も少し違います。
総合課税分から計算します。
○総合課税分
(配当所得について申告分離課税を選択しても、雑所得は総合課税のままです!)
180,000円(雑所得) ー 480,000円(基礎控除) = △300,000円(基礎控除の残り分。課税標準は0円です)
0円(課税標準) ✕ 5.105%(税率) = 0円(総合課税の税額)
総合課税で納めるべき所得税の税額は0円ですね。お次は、分離課税で納めるべき税額です。
○分離課税分
(申告分離課税を選択した配当所得については、こちらで税額を計算します)
840,000(配当所得) ー 560,000円(株式等譲渡損失) = 280,000円(損益通算後の配当所得)
280,000円(損益通算後の配当所得) ー 300,000円(基礎控除の残り分) = 0円(課税標準)
0円(課税標準) ✕ 15.315%(税率) = 0円(分離課税の税額)
分離課税で納めるべき所得税の税額は、0円です。したがって、源泉徴収で天引きされた税金(所得税)は本来の税額(0円)に比べて払い過ぎということになるので、この場合も、すでに納めた100,000円(所得税の分)は還付されます。
なお、560,000円の株式等譲渡損失については、すでに損益通算で織り込み済みですので、翌年度以降に繰り越されることはありません。
申告不要を選択(確定申告しない場合)
最後に、申告不要を選択した場合(確定申告をしない場合)を見ていきます。
証券会社の特定口座(源泉徴収あり)で取引している場合は、申告不要を選択することが可能です。
申告不要を選択した場合、証券会社による源泉徴収をもって課税関係が終了していますので、配当所得について、新たに税額を計算し直す必要はありません。
もちろん、すでに源泉徴収で納めた税金(所得税で100,000円)が戻ってくることもありません。
なお、配当所得を申告しない場合、株式等譲渡損失だけを申告することはできません。したがって、株式等譲渡損失(この場合、560,000円)を翌年度以降に繰り越すこともできません。
雑所得の180,000円については、基礎控除(480,000円)を差し引いた残余が0円なので、納税の必要はなく、確定申告も不要です。
(結論)最もオトクな方法は?
配当所得について、総合課税、申告分離課税、申告不要のそれぞれの場合について具体的な税額の計算を見てきましたが、以上をまとめると、こうなります。
配当所得の選択 | 還付金(所得税) | 損失の繰越 |
総合課税 | 100,000円 | ○ |
申告分離課税 | 100,000円 | ✕ |
申告不要 | 0円 | ✕ |
もうお分かりですね。
総合課税が最もオトクです。
源泉徴収された100,000円の所得税が還付されることに加えて、株式等譲渡損失を翌年以降に繰り越せますので、翌年以降の税金も減らせます。
お次にオトクなのは、申告分離課税。
申告不要を選ぶと、最悪ですね。税金の還付が受けられない上に、損失も繰り越せない。。。踏んだり蹴ったりです。
ウチの奥様も、もちろん総合課税を選択しました。早く税金戻ってこないかな〜
なお、税金の計算は、そのヒトの所得水準や扶養親族の有無、障害の有無などによって大きく変わってきます。ウチの奥様のケースは、所得が比較的少なく夫の扶養に入っている主婦のような方には参考になるかもしれませんが、万人の参考になるようなものではありませんので、十分にご留意願います。
(真エンディング)最後に一捻り。夫の税金への影響を考慮!
以上で、奥様の税金の話はすべて終了なんですが、最後に夫の税金についても考えましょう。かなり重要ポイントです。
奥様の合計所得金額が48万円以下なら、夫のほうが配偶者控除を受けています。奥様の合計所得金額が48万円を超えて133万円以下なら、夫が配偶者特別控除を受けています。
奥様の合計所得金額が増えると、夫が配偶者控除や配偶者特別控除を受けられなくなったり、控除額が減ったりするので、夫の税金が増えちゃう可能性があります。トータルで考えないと最適解は見つかりません。
奥様の選択が、合計所得金額に及ぼす影響を、先の表に追加したのが次の表です。
配当所得の選択 | 還付金(所得税) | 損失の繰越 | 合計所得金額への算入 |
総合課税 | 100,000円 | ○ | 配当所得をそのまま算入 |
申告分離課税 | 100,000円 | ✕ | 損益通算後の配当所得を算入 |
申告不要 | 0円 | ✕ | 算入せず |
ワタシの奥様の場合、総合課税を選択しましたので、配当所得(84万円)がそのまま合計所得金額に算入されます。雑所得(18万円)と合わせて、合計所得金額は102万円。奥様の合計所得金額がこの水準だと、夫のワタシは、31万円の配偶者特別控除を受けられます。
仮に、申告分離課税を選択した場合、合計所得金額に算入されるのは損益通算後の配当所得(28万円)です。雑所得(18万円)と合わせて、合計所得金額は46万円。この場合は、夫のワタシは、38万円の配偶者控除を受けられます。
申告不要を選ぶと、奥様の合計所得金額は雑所得のみの18万円となり、この場合も、夫のワタシは38万円の配偶者控除を受けられます。
先の表を整理し直すとこんな感じになります。
配当所得の選択 | 還付金(所得税) | 損失の繰越 | 夫の税金はどうなる? |
総合課税 | 100,000円 | ○ | 31万円所得控除(配偶者特別控除) |
申告分離課税 | 100,000円 | ✕ | 38万円所得控除(配偶者控除) |
申告不要 | 0円 | ✕ | 38万円所得控除(配偶者控除) |
結局、ワタシと相談して決めた奥様のファイナルアンサーは、総合課税です。ただし、取引のあった8つの証券会社のうち、1つの証券会社の申告をやめて、7つの証券会社の分だけ申告しました。
申告不要を選択するかどうかは、実は証券会社ごとに選べます。7つの証券会社の分を総合課税で申告し、残り1つの証券会社は、申告不要を選択したというわけです。その証券会社は、源泉徴収での天引き額が少なかったので、還付金が少しだけ減りましたが、大きな影響はなかったです。
最終的に申告したのは、84万円の配当所得(8証券会社分)のうち、75万円(7証券会社分)です。その結果、ワタシの奥様の合計所得金額は93万円(75万円 + 18万円)となりました。
奥様の合計所得金額が93万円の場合、ワタシは、38万円の配偶者特別控除を受けられます。申告分離課税や申告不要を選んだ場合と全く遜色ない額の所得控除が受けられました。
配当所得の選択 | 還付金(所得税) | 損失の繰越 | 夫の税金はどうなる? |
総合課税 | 100,000円 | ○ | 31万円所得控除(配偶者特別控除) |
申告分離課税 | 100,000円 | ✕ | 38万円所得控除(配偶者控除) |
申告不要 | 0円 | ✕ | 38万円所得控除(配偶者控除) |
ファイナルアンサー (総合課税+一部申告不要) | 99,000円 | ○ | 38万円所得控除(配偶者特別控除) |
還付金(所得税)は、証券会社1社の分を申告しなかった(申告不要とした)ため、100,000円(8社での天引き分)から99,000円(申告した7社での天引き分)に減りましたが、これぐらいならノープロブレムです。
配偶者特別控除は、奥様の所得が少々増えても控除額は下がりにくいです。うまく活用できれば、節税の幅が広がりますよ。
次回予告
次回は、住民税のお話をします。これが、所得税に輪をかけて面倒くさいです。
しかし、節税のためには、この道を避けることはできません。
乞うご期待~
次回記事は、こちらをどうぞ(↓)
コメント
こんにちは
とても参考になる記事をありがとうございます。
私も奥様と同じ扶養なのですが、株式の譲渡損益で配特を
使うことは全く頭にありませんでした!
給与所得を受けている人だけの恩恵と勝手に思い込んでいました。
IPOの利益を一部申告せずに、合計所得をギリギリ48万以下に
することばかり考えていたので、こちらの記事を読んで目から鱗です。
計算し直して、次の住民税にもチャレンジしてみてます。
お読みいただきありがとうございます。頑張ってください!ウチの奥様にあなた様の垢でも煎じて飲ませたいです・・・