楽天証券の信用貸株がスタートしたのは、昨年(2020年)の9月のことです。
代用有価証券が勝手に利息を稼いてくれますので、投資家にとってメリットも大きいですが、システムにちょっと癖があります、使う場合は注意して使わないと落とし穴もあります。
これまでの経験も踏まえて、楽天証券の信用貸株の功罪についてお伝えしたいと思います。ちなみに、ワタシは、「使う派」です。
信用貸株のメリット
メリットはいわずもがな、代用有価証券が利息を勝手に稼いでくれることです。
なお、現状、信用貸株については、「優待・有配優先コース」の設定しかありません。通常の貸株のように「金利優先コース」のような設定はなく、株主優待や配当の権利日には必ず返却されます。
優待ファンの方も、安心して利用できますね。
信用貸株のデメリットや注意点
信用貸株については、利用するにあたって注意すべき点がいくつかあります。思わぬところで落とし穴に落ちてしまうことがないよう、その仕組みをよく理解してから使うようにしましょう。
通常の貸株とは異なる点もかなり存在します。
利息が低い
信用貸株は、通常の貸株利率よりも低い利率(0.05%低い)に設定されています。通常の貸株の利率が0.1%の銘柄で信用貸株を利用すると0.05%の利率となり、利息収入は半減します。
したがって、単に利息のことを考えるのであれば、信用貸株ではなく、通常の貸株を利用したほうがお得です。
それでは、通常の貸株を使うほうが必ず有利かといえば、実はそうとも言い切れないのが複雑なところ。信用貸株ではなく通常の貸株を使う場合の注意点も、併せて説明しておきましょう。
信用余力が足りなくなると、楽天証券では自動的に楽天銀行から必要資金がスイープされ(設定によります)、その分楽天銀行の資金が目減りします。楽天銀行に置いておけば0.1%の利息を稼いでくれたはずの資金がなくなってしまうわけです。
信用貸株を使うと、その分は信用余力を稼いでくれるので、楽天銀行からの資金スイープを抑えられます。つまり、楽天銀行での預金利息と、楽天証券での信用貸株の利息を両方稼げます。
一方、通常の貸株だと、この両方で稼ぐ技が使えません。この点が、実は、通常の貸株にはない信用貸株の真のメリットとなります。
結論から言うと、楽天銀行からの資金スイープが行われない程度に信用貸株で信用余力を稼ぎ、それ以上に持ち株に余裕があれば、残りは通常の貸株に回すのが最もお得です。
ただ現実問題として、僅かな利息のために、そこまで厳密に計算している余裕まではないかもしれません。
有無を言わせず、自動的に貸し出しが行われる(あとから解除可能)
信用貸株の現状の仕組みは、この制度自体を使うかどうかは選べますが、使うことを選んだ場合、取得した銘柄はすべて自動的に一旦は貸し出されます。
したがって、何らかの事情(例えば他社に移管する株式など)で貸し出したくない銘柄については、いちいち、個別に貸し出しを解除していく必要があります。
すこし融通の利かない仕組みになっているので注意が必要です。
信用貸株のままだと、次に述べるとおり株式を他の証券会社に移管できないという制約があり、優待ファンの皆さんにも影響が大きいです。
信用貸株の制度自体を使わない設定にすることも可能です。この場合はもちろん、勝手に信用貸出は行われません。でも、すべての銘柄で信用貸株を利用することはできなくなります。
この設定は、「マイメニュー」→「お客様情報一覧/各商品に関する設定/国内株式」→「信用貸株」から、いつでも行えますよ。
売却や現渡しはできるが、移管ができない
信用貸株のままでは、他の証券会社に株式を移管できません。
株式移管を使って経費を抑えながら優待クロスを行う優待ファンにとって、最も注意を要するのがコレです。実際、楽天証券で現物を取得して、それをSMBC日興証券に移管しているヒトも多いでしょう。
【関連】SMBC日興証券で優待クロスを行う場合のコスト節約術(現物取得編)
現物取得した銘柄がすべて、一旦は自動で貸し出されますので、移管する銘柄については、個別に貸し出しを外し、さらに代用証券から保護預かりに振り替えなければなりません。ここまでやって、ようやく移管できるようになります。
手間もかかりますが、一旦貸し出されてしまうと、貸し出しを外すだけ2営業日必要なので、時間もかかります。すぐに移管できないとすれば、優待ファンにとっては致命的ですね。
この問題の対策は、存在します。
現物を取得したその日のうちに、貸し出したくない銘柄について信用貸株を個別に解除しておけば、結果的には、全く信用貸株が行われない形で、受け渡されます。すぐに他社への移管も可能です。
この操作は、約定後すぐに行うことが可能です。なお、遅くても現物を取得した日の16:00までに行う必要があります。その時間までに行えば、楽天証券のシステム上、当日分として受け付けられます。これを過ぎると、それだけ、他社への移管も遅れる結果となります。
他社(例えばSMBC日興証券)に移管しようと思っている銘柄については、忘れないようにこの操作をしておかなければなりませんね。
どうしても面倒くさければ、信用貸株自体を使わないという選択もあるかもしれません。
私はどうかと問われれば、多くの場合、現引の操作に引き続いてこの操作を行えますので、確かにひと手間増えますが、そこまでの面倒くささは感じません。
どちらかといえば、信用貸株で金利が稼げるというメリットの方に多くの魅力を感じます。
長期認定に悪影響
この点は、信用貸株に限らず、通常の貸株でも同じことなのですが、一応、念のため。
信用貸株でも、貸し出されると株主番号が変わる可能性があるので、株主優待の長期認定に悪影響を及ぼす場合があります。
まとめ
以上、信用貸株について見てきましたが、いかがだったでしょうか。
信用貸株は投資家にとってメリットがあります。代用有価証券が勝手に利息を稼いでくれますし、うまく使えば、楽天銀行からの資金スイープも抑えられますので、楽天銀行の利息UPにも貢献します。
かならず「優待・有配優先コース」となりますので、配当金や株主優待を取り損ねることもありません。
一方で、デフォルトの自動的貸出設定を変更できないなど、ちょっと融通が利かない仕組みです。特に、貸し出されたままだと株式の他社への移管ができず、貸し出しを外すのにも時間がかかります。
ただし、この問題については、現物取得直後に個別に信用貸株を解除すれば、問題なく対策ができます。
信用貸株は、使うのであれば、仕組みをよく理解して、うまく使っていきたいですね。私は、「使う派」で半年以上やってきましたが、結構満足しています。
思った以上に、こまめに利息を稼いでくれるので、手間がかかるというデメリットを考慮しても、それ以上に投資家にとってメリットが大きい仕組みだと感じています。
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