
カブコムから衝撃の発表です。信用金利及び貸株料の引き上げです。さらに以前から有料化すると言っていた品受・品渡手数料の具体的な金額が明らかになりました。
以前の記事でカブコムの信用取引の手数料無料化をお伝えしたところですが、ちょっとドンデン返しです。クリスマスプレゼントというよりは毒まんじゅうかもしれません。
優待投資家にとって特に影響が大きい貸株料については、5割増の大幅な引き上げです。各証券会社の間で貸株料の引き下げを競っている動きに完全に逆行しており、正気を疑うレベルです。
長期間にクロスをする場合の影響は甚大です。長期クロスを狙う顧客は、みんなSMBC日興証券か楽天証券に流れるでしょう。
どうしちゃったのカブコムさん、気は確かですか?走る方向はそっちじゃないよ!これではお客が逃げちゃうよ。。。
発表内容はこれだ
まずは、発表の全体像を眺めてみましょう。カブコムから12月6日に改めて発表されたのがこれです。

信用取引手数料の無料化以外は、すべて顧客に負担を強いる内容となっています。ベストプライス宣言に期待していただけに残念です。
今回明らかになった改悪の部分を、優待クロスの目線から、ひとつひとつ詳しく見ていきましょう。
信用金利(買方金利)の見直し
今回の見直しで、買方金利が引き上げられます。以下の部分です。

買方金利の引上げに関しては、優待クロスの場合は長期に買い建てることはないので、影響は少ないでしょう。むしろ信用取引手数料無料化のメリットが大きく、信用買い→現引きを使う場合、全体としてはコストの減につながると評価できます。
ただし、楽天証券のいちにち信用やSMBC日興証券のイージートレードダイレクトコースを使えば、もっと低コストになります。
後段で説明する品渡の有料化も踏まえれば、現物取得にカブコムを利用する余地はほぼないでしょう。
貸株料の見直し
もっとも優待投資家に影響が大きいのはこの見直しですね。貸株料が大幅に引き上げられます。次のとおりです。

長期クロスを考える場合、現実的な選択肢としてはこれまで、楽天証券(貸株料1.1%)、SMBC日興証券(貸株料1.4%)、カブドットコム証券(貸株料1.5%)のいずれかでしたが、カブコムはこの3社のなかで最も貸株料が高い水準でした。
今回は、さらに引上げです。5割増という引上げ幅。血迷ったのでしょうか?もう長期クロスの顧客は欲しくない?!
貸株料は、優待族にとってはおコメと同じ生活必需品です。おコメの値段を5割も引き上げたら米騒動が起きますよ。貸株騒動が勃発しないよう祈ります。
ただし、今回の見直し後も一般信用長期の貸株料は2.25%と、他のネット証券会社の一般信用短期の貸株料(3.85%〜3.9%)を下回ります。短期勝負ではまだ優位性を保っていますね。不幸中の幸いといったところでしょうか。
品受・品渡手数料の有料化
品受・品渡手数料の有料化自体は少し前からアナウンスされていましたが、今般、その金額が明らかになりました。次のとおりです。

こりゃあ、手数料並みに取られますね。せっかくの信用取引手数料の無料化が台無しです。もう誰もカブコムで品渡をする人はいなくなることでしょう。
仮に売り玉をカブコムで確保しても、もはや現物までカブコムに移管する必要はありません。手数料の安い別の証券会社で現物を取得して手仕舞えばよいですね。
SMBC日興証券はイージートレードダイレクトコースを選択すれば信用取引手数料が無料です。楽天証券は大口優遇で信用取引手数料が無料です。GMOクリック証券は手数料のキャッシュバック優待があります。現物はこれらの証券会社で確保して手仕舞えばよいでしょう。これらの証券会社では現引・現渡も当然無料です。
売り禁等ですぐに手仕舞えなかったり、現物手数料を支払う羽目になるリスクはありますが、しょうがありません。そこは諦めるしかないでしょう。
カブコムは長期クロスの顧客を捨てた。短期クロスは良い感じ。
auカブコム証券として新たな一歩踏み出しベストプライス宣言を謳っていただけにカブコムには非常に大きな期待がありましたが、今回の一連の見直しはその期待を見事に裏切ってくれた印象です。ちょっと看板倒れでしたね。
「信用取引手数料の無料化」という打ち出しのインパクトにこだわるあまり、他のサービスの水準が少々悪くなっても構わないと考えたのであれば、とても残念です。優待投資家はちゃんと各社のサービス水準を冷静に見ています。
長期間のクロスに関しては、今回の見直しで、カブコム証券はSMBC日興証券の完全な劣化版になりました。サービスの質で完全に負けてます。貸株料が低く在庫も豊富なSMBC日興証券が、コスト面で絶対的に有利です。在庫は少ないながら、楽天証券も結構頑張ってます。カブコムの出番はますます少なくなるでしょう。
一方で2〜3週間以内の短期のクロスであればであれば、今回の見直しによってカブコムの利用価値は上がっています。まだ楽天証券やSBI証券、GMOクリック証券の一般短期と比べて貸株料のアドバンテージが残っている上に、信用取引手数料の無料化で、トータルのコストは従来より下がる可能性が高いです。
ただし、現物までカブコムで確保して品渡を行ったのでは、せっかくの手数料無料化の効果が打ち消されてしまいます。現物の確保はカブコム以外で行いましょう。
吉と出るか凶と出るか?
カブコムは今回の一連の見直しで、長期クロスに軸足をおいていた従来の課金体型から、SBI証券やGMOクリック証券と同様、短期クロスに軸足をおいた課金体型へと転換を図ったようです。
長期クロスへの対応では、やはり大手のSMBC日興証券にかなわないと思ったのでしょうか?短期クロスの顧客を他のネット証券と奪い合う路線で活路を見出そうとしているのでしょうか?
でもね、自分たちの強みを捨てちゃって本当にやっていけるの?余計なお世話ですが、正直心配です。いったいどんなポジションを目指しているのでしょうか?
この見直しが吉とでるか凶と出るか、短期クロスの顧客を奪い合うネット証券間の競争が激しくなることだけは間違いなさそうです。
ネット証券戦国時代の幕開けかもしれません。今後の動きから目が離せませんね。
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