立会外分売で申し込むべき銘柄と申し込んではいけない銘柄

毎年120本以上が実施される立会外分売。月平均でも約10本は実施される計算です。例外なくディスカウント(割引)はありますが、だからといって何も考えずに片っ端から申し込めばよいかというと、そんなことはありません。

分売価格を下回ったまま一度も浮上することなく実施日の取引を終える水没銘柄も他の銘柄に紛れてこっそり出てきます。

立会外分売で売り出される銘柄は、比較的株主数が少なく取引の厚みのない銘柄も多いです。こういう銘柄は値が大きく振れやすいので、いったん売り込まれると、わずかなディスカウントなどすぐに通り越えて値をどんどん下げたりします。

では、申し込むべき銘柄と申し込んではいけない銘柄はどのように見分けたら良いのでしょうか。

株価分析

短期勝負であることが、銘柄選びの大前提

銘柄選びの大前提は、立会外分売が短期勝負であるということです。なぜ、立会外分売が短期勝負なのか、得心がいかない方はこちらの記事をご覧ください。

株価は短期的には、主にその時々の売りと買いの状況、すなわち需給によって変動します。一方長期的には、企業のファンダメンタルズや成長結果が株価に織り込まれていくと考えられます。したがって、短期勝負の立会外分売に関しては、その時点での需給に影響を与えそうな要因をチェックしておけば、ほぼ必要十分です。ファンダメンタルズは基本的に気にする必要はないでしょう。

銘柄選定にあたって必ずチェックすべきポイントはなにか?

まず、銘柄を選ぶ上で、必ずチェックすべきポイントをみていきましょう。

最近(直近と過去3〜6月程度)の株価動向

直近の株価動向は必ずチェックしましょう。通常売出しが発表されると、株式の発行総数が変わらなくても固定株が浮動株に振り替わるので、それによる希薄化を嫌気する売りが入ることが多いです。このような売り(空売り)が十分に入って値が下がっていると株価は反発しやすくなります。

逆に株価が実施日に向けて釣り上がるような動きになることもあります。様々な思惑があってこのような動きが生じていると考えられますが、このような動きの銘柄は避けたほうが無難です。

また、直近だけでなく、3〜6ヶ月程度の株価の推移もあわせてみておくとなお良いです。いつ売り込まれてもおかしくないような高値圏で売り出される場合もあります。売り出す方は高値圏で売りたいでしょうが、買う側にとってはリスクが高いです。

取引の厚み(出来高)

売出銘柄の取引の厚みは必ずチェックすべきです。具体的には、日々の出来高がどれぐらいあるのか、それが売出株数に比べて極端に少なくないかをみておきましょう。立会外分売が実施されると、分売された株式の一定割合、場合によってはかなりの割合が潜在的な売り圧力となります。これが市場に流れこんだときに市場がスカスカだと株価は急落します。

注文に厚みがなく取引がスカスカな銘柄は避けたほうが無難です。

分売のインパクトの大きさ(分売の規模)

立会外分売の売出数量がその銘柄の株式需給全体にどの程度のインパクトがあるのかはチェックしていおいたほうが良いでしょう。特に立会外分売による売出しで浮動株が大きく増加するようなケースは、希薄化が懸念されるので値下がりリスクが高いです。もっともこのようなケースでは、分売発表後にかなり売り込まれて株価が調整される場合も多いです。

また、分売数量そのものの大きさもかなり重要な要素です。一般論としては、分売枚数が多ければそれに比例して売り圧力も増えます。分売枚数が少なければ売り圧力はそれほど増えません。売り圧力が大きければ大きいほど当然値下がりリスクは高くなります。

なお、分売数量は、当選確率にもダイレクトに影響します。

チェックすべきポイントのまとめ

以上のように、最近の株価動向、取引の厚み、分売の規模は、株式の短期的な需給に直接影響を与える要素です。これらは、必ずチェックしたほうが良いでしょう。

あまりチェックする必要のないポイント

あまりチェックする必要のないポイントもあります。企業のファンダメンタルズに関する指標は短期的な値動きとは直接的な関連が薄いので、あまり見ても仕方ないです。具体的には次のとおりです。

割高か、割安か(PER、PBR、ROEなど)

長期的なキャピタルゲインを狙うのであれば、企業価値が潜在的に割高か割安かを見極めようとしますし、PERやROEなど様々な指標をチェックすると思いますが、短期勝負の立会外分売では、このような指標はほぼ無意味です。

業績の達成状況や今後の見通し

業績の達成状況や今後の見通しについては、それが世の中に出た時点で株価には織り込まれてしまいますし、その後の短期的な株価の動きにいちいち影響を及ぼすものでもありません。気にする必要はないでしょう。

配当性向や株主優待の有無、内容

配当性向や株主優待の有無、内容についても短期的な株価の動きに直接影響を及ぼすことは少ないでしょう。ただし、優待内容が非常に魅力的で権利日が近いようなケースでは、株価は下がりにくくなることもあります。

チェックしなくてもよいポイントのまとめ

以上のように、株価がファンダメンタルズ的に割安か割高か、業績の状況や見通し、配当・優待に関する情報はあまり気にする必要はないです。むしろ、こういうものを気にしすぎて申込みを萎縮することになると、チャンスの幅をみずから狭めることになります。

結局、申し込むべき銘柄はなんなの?

さあ、いよいよ本題に入ります。ここまでの話をまとめると、申し込むべき銘柄の理想型は次のような銘柄です。

  • 直前に十分売り込まれており、かつ、中期的にみても高値圏にない。
  • 取引の厚み(一日の出来高)が十分にあり、分売枚数を吸収する上で問題がない。
  • 分売枚数が少なく、売り圧力の増加による株価低下の懸念が小さい。

しかし、こんな3拍子すべてが理想的に揃う銘柄は多くありません。仮にあっても、そのような銘柄は分売枚数が少ない上に人気も高いので、申し込んでもなかなか当たりません。

臆病にならず、気楽に行こう

メッシュは、株価動向、取引の厚み、分売の規模は当然チェックしますが、それらがすべて良くなければ申し込まないわけではありません。どちらかといえば、これらの指標の中にひどい状態のものがないかを見ています。一つ又は複数の指標がひどい状態で危険信号が出ていると思えば申し込みませんが、そうでなければ結構おおらかに申し込みます。

実際、過度に臆病になる必要はまったくありません。過去のデータで、一度も分売価格にすら達することなく、それを下回る価格で実施日の取引を終えた、いわゆる水没銘柄がどれぐらいあったのか、その割合をを見てみましょう。

  • 2019年(1月〜9月) 9.2%
  • 2018年      10.9%
  • 2017年      5.3%

実は、リスクは限定的

純粋な水没銘柄は5%〜10%といったところです。つまりおおむね9割以上の銘柄は、少なくとも取引時間内に分売価格以上に株価が浮上するわけです。欲張りさえしなければ負ける確率は低いです。少々危険信号が出ていても、利益が出ることも多いです。

メッシュは、大きな危険信号が出ていないと思えば、けっこう気軽に申し込みます。危なさに応じて申込数量に濃淡をつけることはあります。運が味方せず勝負に負けることもありますが、トータルではプラスを維持できています。それぐらいで取り組むと、けっこうチャンスは多いので、モチベーションも維持しやすいです。適度なドキドキ感も味わえます。

ただ上限の10単元を申し込んですべて当選したときなど、真っ青になることもあります。どうやって売り抜けようか考えますが、意外と分売価格近辺で売り抜けられることも多いです。

考え過ぎは、かえって弊害

分売実施企業のファンダメンタルズなど、株価の短期的な値動きと関係の薄い要因で思い悩んだりすることはありません。これらの情報はほぼスルーです。見るだけ無駄ですし、それで萎縮すれば弊害のほうが大きいです。

イレギュラーな銘柄にだけは気をつけろ!

けっこう気楽に立会外分売に取り組んでいるメッシュですが、ひとつだけ絶対に申し込まないケースがあります。それはイレギュラーな手続きが行われる場合です。例えば、分売予定期間の初日に分売を実施しない銘柄です。

立会外分売は分売予定期間をあらかじめ発表しますが、ほぼ99%、当該予定期間の初日に分売を実施します。このような慣例を無視して初日に分売を実施しないとすれば、そこにはおそらく売り手側の何らかの思惑が証券会社を通じて働いていると見るべきでしょう。著しく透明性に欠けますし、売り手側の思惑は買い手側の利益に反する場合が多いです。

実際、このようなイレギュラーな銘柄は大コケする場合が多いです。まさに地雷です。こんな地雷にだけは、近寄りたくもありません。

お役に立てば幸いです

なお、ここで書いている手法は、あくまでもメッシュのこれまでの苦い経験も踏まえた自戒の上に書いているものです。いわばメッシュとしての羅針盤です。これ以外にも、きっといろんな手法があると思いますし、メッシュのやり方よりも素晴らしい方法もたくさんあると思います。

投資は自己責任です。皆様のより良き投資生活に少しでもお役に立てれば幸いです。

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