岸田内閣がいきなりの大幅トーンダウンです。
10/10のテレビ番組で、「金融課税強化は当面考えていない」と明言しました。
【日経新聞報道】首相、金融所得課税の強化「当面考えていない」(10/10)
配当金や株式等譲渡所得に対して増税されるのかと若干懸念していましたので、正直ホッとした気持ちもあります・・・
岸田政権、発足直後の支持率も低空飛行で、選挙前に増税を打ち出すような勇気はないようです。
早くも新政権肝いりの「分配」政策も看板倒れでしょうか。確かに、所信表明演説(10/8)でも、金融課税強化についてはまったく触れられていなっかったようなので、あまりやる気が無いことだけは確かでしょう。
ここからは、金融課税の現状と見直しの本当の意味を、少し真面目に考えてみましょう。
金融所得の中でも、株式等譲渡所得については、分離課税として、本来累進的に課税される総合課税とは切り離されて課税されるのには、ちゃんとした理由があります。
株式等譲渡所得は、通常長年の保有による値上がり分なので、たまたま売却した年に大きな所得となったとしても、それをもとに累進課税で高い税率で課税してしまうと、かえって不公平なのです。
不動産(土地や建物)の譲渡所得と一緒ですね。不動産の譲渡所得も、分離課税となっており、たまたま売却した年に大きな所得があったとしても、それで税率が跳ね上がることはありません。
一方で、同じ金融所得であっても、利子所得や配当所得については趣が違います。これらは、毎年の経常的な所得なので、本来は、総合課税として、給与所得等と同様に、累進的に課税してもおかしくはないのです。
現に、利子所得や配当所得は、所得税法第22条で、本来的には、給与所得等と合計して課税されることになっているのですが、租税特別措置法などで、実際は、特例的に分離課税とされているのです。
分離課税とされた背景には、所得の補足が煩雑となる中で効率的な徴税を行うなどの政策的な理由があったと思われますが、そのため、どんな所得の少ない人でも税金を取られますし、所得の多い人でも、低い税率で済むという状況につながっているのです。
このような現在の税制の歪みを改めようとして「金融課税を強化する」と言ったのであれば、岸田総理は決して間違ってはいないと思いますし、むしろ、健全なことを言ったと見るべきでしょう。
もちろん、増税すると言われて喜ぶ国民はいませんし、個人的には、増税して欲しくないという気持ちもありますが、現在の税制の歪みを正すために必要だと言われれば、理解できなくもありません。
理屈に合わない税制で、貧乏人は余計に税金を取られ、お金持ちは本来よりも少ない税金しか払わなくて済んでいるという現実を直視し、国民のためにやるべきことをしっかりやろうとする姿勢であれば、そのような政治家こそ、応援してあげたいですね。
でも、残念ながら、この国には、そのような本当の政治家はいないのかもしれません。
このことが、増税よりも何よりも、いちばん悲しいことかもしれませんね。。。
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